「母子分離不安」という 親子関係
小学生の不登校には、「母子分離不安」という原因があります。
しかし、私が相談を受ける親御さんの中には、
「母子分離不安、と言われても…、良く分からない」と仰います。
そこで今回は、
「母子分離不安とは、どういうことなのか?」をお伝えします。
目次
1.母子分離不安とは?
2.なぜ、母子分離不安だと、不登校になるのか?
3.母子分離不安の子どもの要因
4.母子分離不安の母親の要因
母子分離不安とは?
「母子分離不安」とは、子どもが、母親から離れることに対して、不安を感じることをいいます。
ただ「不安」とは、人間が生まれながらに持っている 自己防衛本能です。
もし不安が無かったとしたら、危険を顧みずに行動してしまい、命を落としてしまうかも知れませんね。
つまり、「不安」は、人が生きていく上で、欠かせないものなんです。
例えば、赤ちゃんの時、母親と離れることを怖がって泣き叫んだり、しがみついたりすることがありますよね。
これは、子どもにとって母親が、「最も身近で 安心感を与える存在」だからなんです。
そのため、幼い子どもが母親から離れる際に、不安を感じるのは当然のことで、幼児期から児童期にかけて、多く見られる現象です。
また、人は、子ども時代を、親に依存した状態で生活します。
そして、成長するにつれて 少しずつ自立し、母親との間に、ちょうどいい距離が取れるようになっていきます。
しかし、小学校に進学しても、その距離が上手くつかめずに、強い不安を感じてしまう 子どもがいるんです。
例えば、子どもが母親と一緒に、小学校の校門前まで行くと、「ママ、行っちゃヤダ~」と泣きわめく子どもと、それに困ってしまう母親、といった姿です。
そして、登校することが叶わずに、帰宅するはめになるか、お母さんがいないと、子どもが教室に入れない。
あるいは、授業や給食を食べることができない 等の現象が表れます。
この場合、お母さんが学校生活の全てに参加すれば、子どもは、不登校にはなりません。
でも、現実には無理な話ですよね。
ですから、不登校になっているんです。
なぜ、母子分離不安だと、不登校になるのか?
なんとなく、「母子分離不安」について、お分かり頂けたかと思いますが、もう少し、「不登校」との関係について、お話ししますね。
「分離不安」は、1941年 米国の研究者ジョンソン氏によって名づけられました。
当初、不登校や登校拒否は、「高い場所が怖い」という「高所恐怖症」のように、学校自体が、パニックの原因なのではないか、と考えられていたようです。
しかし、不登校の子どもは、母親が一緒にいれば、授業を受けることができたり、給食を食べることができる。
でも、お母さんの姿が見えないと、パニックになる。
ということが分って、 学校自体(=高い場所)が原因ではない、との結果が出ました。
よって、分離不安の背景には、学校自体ではなく、
親から離れて過ごさねばならない状況が、子どもを不安やパニックにさせている、としたのです。
つまり、「学校が怖くて、行けない」のではなく、
「親から離れられないから、学校へ行けない」のです。
母子分離不安 の 子どもの要因
さて、母子分離不安になる要因は、幾つか考えられますが、私がカウンセリングをしていて、強く感じるのは…
“ 母親と子どもの信頼関係が、実感レベルで 確立されていないこと。”
その中でも、子どもが親に 過剰なまでに依存し、
親は子どもを、干渉し過ぎている場合です。
この親子関係は、一見すると、子ども思いの親子関係に見えます。
しかし、その実態は…
子どもへ、安心感が伝わらず、健全な親子の信頼関係が築けない 状態です。
そのため、子は親離れできない、親は子離れできない、「共依存」状態を招いています。
でも、どうして、そうなるのでしょうか?
それは、人間の成長の仕方や、自己肯定感に由来します。
幼少期の子どもは、自分でご飯を食べられるようになったり、服を一人で着替えられる等、小さなステップ(目標)をのり超えて、成長していきます。
子どもは、これらの目標を達成した時、お母さんに褒められることが嬉しく、同時に、達成感 や 充実感 を得た喜びで、自分の成長が嬉しいものです。
しかし、小学生になると、次第に目標ステップが高くなり、子どもによっては、そのステップを超えられない場合も出て来るのです。
ただこれは、大人だって、「できることと、できないこと」「向き不向き」がありますよね。それと同じことなのですが…
親による先回り や お膳立て、何でも与えられ、やってもらっていた子どもは、「これはできるけど、これはできない」と、自分で自分を、素直に受け入れること(自己を肯定すること)が、難しくなります。
そのため、苦手なステップの前で立ちすくみ、挫折してしまうんです。
また、子どもの原動力は、「お母さん」と言ってもいいくらい、子どもは、みんな お母さんが大好き!
そのため、いつも褒められたくて、頑張っています。
しかし、母親に褒められることが、できた時はいいのですが…
失敗をしてしまった時や、できないことに直面した時に、どうしていいのか、分からないんです。
中でも、子どもの行動目的が、「お母さんの望みを叶えるため」という場合は、本当に大変です。
例えば、「お母さんに褒められるため」、「お母さんの期待に応えるために」、頑張っている子どもは、それが叶わなかった時…
「○○ができずに、お母さんの期待に応えられない自分は、嫌われてしまう」
「こんな私をお母さんは、ずっと好きでいてくれるの?」と考えます。
すると、子どもの中で、不安や恐怖が必要以上に大きくなり、
「○○ができない私は、お母さんに見捨てられてしまう!
そうなったら、大変、生きていけない。
だから、お母さんといつも一緒にいよう!」
と、恐怖心から逃れるために、親から離れられないんです。
母子分離不安 の 母親の要因
一方、母親は、「子どものために」、
「私がいないと、この子は何もできないのよ」等々…
一生懸命、子どものお世話をすることに、「喜び」を感じています。
また、母親自身も、代々 親御さんに、同じように育てられて来た経験から、子どもに対してのお世話を、「良かれ」と思ってやっていますし、その接し方や愛情表現は、「愛」であることも事実です。
しかし、子どもが不登校になっている時点で…
母親のその愛情表現は、子どもに上手く伝わっていない。
あるいは、母親の存在価値 や 母親自身の生きる意味を、 子どもによって 見出そうとしている場合があるんです。
ここは、ちょっと分かりずらいかも知れませんね。
一生懸命、子どものお世話をしているのに、なぜ、母親の愛が上手く伝わらないのか?
それは、子ども同様に母親自身も「自己肯定感が低く」、「強い不安」や「恐怖心」を感じているからです。
そして、自分(母親)の不安 や 恐怖心を埋めるために、「子どもに必要とされたい。頼られたい」と、無意識に思い過ぎてしまいます。
すると、「母親の愛」よりも、「母親の不安」を より多く伝えることとなり、子どもに愛が伝わりにくいんです。
そのため母親自身が、必要以上に 子どもの不安を煽ったり、依存させてしまうんです。
ただこれは、自分で自覚することは、とても難しく、受け入れたくない事実です。
だって、母親にとっては、それが自分の愛情表現だからですね。
そのため、他者から客観的に見てもらわない限り、気付けない場合が多いんです。
「過干渉」は、「健全な親子の信頼関係」を築けず、子どもの意思を奪い、自立を阻む恐ろしい行為です。
子どもがお母さんと一緒でなければ、登校できない状態なら、早めに専門家に相談して下さいね。
そして、「健全な親子の信頼関係の構築」と「コミュニケーション方法」を学び、実践していくことが大切です。
また、小学生の不登校に多いパターンとして、もう一つの要因がありますので、その「見極め方法」や、「自己肯定感を高める方法」も、合わせてお読み頂ければ、幸いです。
小学生に多い、2つの不登校 パターン
自己肯定感を高める方法
最期まで お読み下さり、ありがとうございました。
まとめ
1、母子分離不安とは、子どもが 母親から離れることに対して、不安を感じること。
2、学校が怖いのではなく、親から離れられないから、学校へ行けない。
3、見捨てられ不安により、子どもは母親といつも一緒にいようとする。
4、健全な親子関係を構築する方法 を学び、実践する。